2011-01-01から1年間の記事一覧

色恋は麻痺毒

女性について、いまさら、ああだのこうだのと、悩むことは少なくなった。それはまあ全般的に言えることだが、ある程度のことに対して悩むことはほとんどない。昔から自分はその傾向にあるとは言え、だ。つまり不眠症とは人生という演劇生活における最も魅力…

ソードフィッシュトロンボーン和尚の告解

女もともだちもいない。そんなものはいらない。第一、気が散るだけだ。町には猫がおり、マッサージ店もあり、ガソリンスタンドは閉店中。ロボット工学博士でもあるまいし、ぼくはエネルギー政策にたいしてあれこれチャチを入れるような毒饅頭人間ではない。…

肥大化するせいしゅんの傷跡とスライスされたとおぼしき新月

拳銃をかいました 拳銃をかいました ころがる夏を撃ち殺し だるま顔をした秋が 夏にけつまづいて 二度と微笑まないように 企画書を上層部にとおしました ゴーサインはでませんでしたが 拳銃をかいたしました 斑の色のなつかしさ 萌えいずる春を後部座席につ…

ピーマン焼きそばの味

ピーマンしか具が入っていない焼きそばをあなたは食べたことがあるだろうか。ピーマンしか入れてはだめだが、青海苔は沢山かけてもいい(下品にならない程度には)。ピーマンの青。青海苔の青。青をダブルで。それを頬張る度に思い出す一家があり、それは僕…

Homecoming queen

お馬さん お馬さん あだすの邦のお馬様やい 万有引力でガタガタ震えがくらあ 嗚呼使っちゃいねえ 取って置きの箱に入った花火 使っちゃいねえが 奴らは腐り濡れ明滅しておるのだ 帰郷する売女 帰郷する売女 研がれた牙哀れにも 白痴のごとく地面に転がり果て…

気分一新屍鬼一掃

ぼくはさいきん、ぜんぜんだめだ。なってない。はっきりいって、くずどうぜん。だからもうにどとここにはもどらない、つもりだった。つもりだったの。で、ふたをあけてみれば。タイトルかえて。バッチリやるき。おそれいったね。ほんとうにいやになるだろ。…

河と口論

先日、電車の中で女と口論になった。女とはまだやってないが知り合いだ。口論といってもどうしようもないものだった。貴方は、と彼女は言う。人の心の裏側ばかりしか見ていない。まるで良い方向を見ていない。はっきり言って人生経験が浅い。俺は別に誰彼か…

敗者さん

レディー・ガガさんの醜女ぶりが放射能に勝るとも劣らぬ汚染度ですが、みなさん健やかにお暮らしでいらっしゃいますでしょうか? まあみなさんと言ったって、ここを読んでいるのは三人ぐらいだから私が心配することのできる限度は60億分の3ということで、…

読書のうれしさ

基本的には家ではあまり本を読みませんね。風呂場はユニットバスで便所の上のタンクの上には山のように文庫本や漫画は積んであります。部屋は六畳間ですが、そこも本だらけです。ソファーの上には脱いだズボンやらギターやら半分使った徳用コンドームの箱(…

通常営業

調布にもどりたい 仙川でお茶したい 弱気になれば 轟音が身体の奥から響くので 杖をついて 手をたたき 空にツバして なけなしの 獣性を 叩き起こせ

吸血惑星

学校で虐められた。虐めた奴の名前は全部覚えている。どんな顔をしていてどんなことを僕にしたのか。すべて覚えているし、忘れない。忘れないだろうけども、全部ノートに細かく書いた。それで終わったと思った。何もかも終わったって思った。僕は生きていく…

韮卵定食

高畠善信は善を信じていた。善行の効果を絶対視していた。だから軽トラで迫り来る津波から逃げる途中でも自分が死ぬわけがないと堅く信じることができた。軽トラがひび割れた道にバウンドしてはまりこんだが、なんと津波の力で車は押されるように穴から抜け…

牛の子

ナオミは地下室で、十年を過ごしていた。父親のマサオが彼女を監禁し続けていたのだ。ナオミは小さい電球の光だけ浴びて暮らしていた。適切なビタミンや食事はマサオがサプリメントを混ぜた猫飯を彼女に与え続けたせいでどうにか生きている状態だが、彼女は…

神への祈りで飯(マンマ)が炊けたらわけねえや

みなさんの健康と幸運を祈ります 僕は××側につきみなさんと戦うつもりです 僕はあなたを銃で何発か撃つつもりですがどうか死なないで下さい お元気で

怨歌『9909899』

烈しい歯軋りをした観音寺は寝返りをうつ時に必ずと云っていいぐらいに背中も打つのだ。それから痛いと云う。イタイイタイと繰り返し蝙蝠が産婦人科医院の上を飛んでいる間中×つまりは夜だ×夜の間中にずっとそうやって云っては自分は不眠症なのだと観音寺は…

膝町

例え皆が是とも否と答えることこそ至上の誉 ぼくがみた せかいはきたならしく あかに まみれて よごれている こくえんが とおくのほうで あがっていて べんとうかたて みんなはのこのこでかけ てんぷく はんぷく いやなゆめ ぼくは どろみずをすする ごうか …

人工知能

人工知能を移植されて早弐十と七年が過ぎました。ぼくは自分を人間だと勘違いしている器械です。こんばんは。ぼくが「そのこと」に気付いたのが忘れもしません。一昨日の飲み会の帰りでした。同僚の花田教子さんと帰る方向が一緒だったのでタクシーに同車さ…

イッツアワンダフルライフ

この世には善と悪が対立している。そしてその比率たるや、人によって違い、1対9という人もあれば、半々という人もいる。善と悪とのふたつしかないのであれば、それは半々であるとみていいだろう。そうしなければ、対立すること自体が意味をなさなくなるの…

マーク・リンコス最期の一日

昨年亡くなられたマーク・リンコスさんへの哀悼の意を表明します。 フレディーはその日ぬらぬらする寝起きの顔を亡霊のように揺らしながら妻と飼い犬たちに今朝方見た夢を語った。もごもごと喋る様子はいつもどおりの奇人ぶりであり、妻もそして弟のアレクス…

異常性愛主義

黎明期。ぼくと鳥子。鳥子と早凪。関係性の図式を描くと筋肉は余計に電流を流し始めた。早凪は学生の分際でぼくの大切な鳥子をそそのかし、二人で手に手をとって逃げたわけであって、ぼくは何もそれを手をこまねいて見ていた朴念仁というわけでもなしに、た…

輝く黄色い自転車と超現実王国の水声

それがゾンビとグールと死人の町だと気付いたのがいつの頃か。僕は雨に濡れた燦然と輝く県道を右へ左へと行き行き、見慣れぬながらもよくある商店や食事処の景色などをぼんやりと眺めた。牛タンと饂飩の店では店の奥までよく見渡せて饂飩をこねる主人と虚ろ…

レクイエム【2011年2月】

なんていうか。マトメは結構どうでもいい気持ちが強いです。レディ硫黄ヘッドの新作が出たんです。なんていうかな。終わったなというか。ソム・ヨークの魅力はなんといっても拳銃を口の中に突っ込み泣きながら鳴く手法というか。まあつまりね。そういう拳銃…

塔ノ山幻覚

私は人生に投げ入れるべきものを全て詩に投げ込んでしまった。 ウラジーミル・ナボコフ 三年前の今頃だった。同棲していた女性と折り合いが悪くなっていた私は昼間は出て行く先と就職先を探し、夜はなるべく彼女に会わないで済むようにファミリーレストラン…

パステル

新稲さんは泣きたくなるぐらい可憐な少女だった。その日、新稲さんの服装は正ガールだった。正しくガールそのものだった。淡い水色のスカートに赤い花の刺繍があしらわれた白いシャツ。僕も向井も新稲さんが好きだった。いや、クラスの男子で新稲さんに恋を…

奇縁の作法

奇縁というものは怖ろしい。祖父はかつて鉄砲足軽の士分格の家に生まれたのであるが、曾祖父の代に、城下町が焼けて全財産を潰し(先祖が殿様から頂戴した脇差やら感謝状が焼けた)、挙句親類縁者に不義理を重ねては出奔を繰り返し、とうとう、K村のS氏に…

花牟田電鉄

ダイアを計算して、絶好のポイントを探し出すのは苦労も多いが、とてもやり甲斐のある仕事だ。ぼくは、三脚を置き、カメラをセットしてフォーカスを合わせる。花牟田電鉄は上下線合せて一日に八本。地元住民でさえ学生以外は殆ど使うこともない、マニアック…

弾葬

アドリアン、と老人は震える声で息子を呼んだ。アドリアンはやって来た。パパ、パパ。アドリアンは四十歳にもなってメソメソしている。老人は杖でアドリアンの肩をコツっと叩き、しゃんとせんか、とたしなめた。総領息子よ、あとのことはすべて、儂が取り仕…

外道ピクニック

これは既に終わってしまった重犯罪の告白ととっていただいて構わない。私は愛美をこの手にかけてしまったのだから。順を追って、お話しよう。愛美は良き妻であり、良き愛人であり、良き相棒であり、良き友であった。愛美は気位の高い女で、私を縛り付ける。…

ホーリー・シガー・マウンテン

その日、おれと親父はお袋の居ない家で二人きりだった。普段から会話なんてものは全くなかったものの、さすがに狭い家に一緒にいて、お袋がいないとなると親父も気を使って、夕飯用に用意されたカレーなどはやめて、親父特製の焼きそばにしてみようかと声を…

白菊荘1984

僕は小母さんのことなんか全然好きじゃない。その証拠に僕は今小母さんとキスをしている。小母さんは黙っていた。僕も黙っていた。小母さんは母の大学時代の同級生で、僕はオムツを替えてもらったこともある。そんな人に恋はできない。するわけない。第一、…