2015-01-01から1年間の記事一覧

スターニー・スタン

彼女の髪を撫でていると、ミイラを思い出す。生贄に出された古代王国の処女のごとくトウモロコシの髭のような色に半分だけブリーチされた髪。豊かな髪。私の中年の腹に身体をぴたりと付けて心地よい寝息をたてている。滑らかな肌。若さ。それらが渾然一体と…

悪。この世の悪のすべて。それらを集め、裏漉しをしてから、火がかけてあるひとつの鍋にいれる。ぐつぐつと悪が煮られていくと食欲がそそられるような香りに満ちる。悪のスープ。これを飲めば世界の王になれるという。しかしそれを飲んだものはまだいない。…

儚く優美な細い指が異臭を放つ紫色に反り上がった陰茎を握るまで

春色のコートを羽織ったきょうの彼女は念入りに綺麗だった。録郎は彼女の細い首を絞める妄想をしながら、無言で彼女の後ろを歩く。振り向いては、笑顔を見せる彼女。歯が完璧に整っている。あれらの歯をペンチで一本一本全部抜き取ったらどれだけすっきりで…

milky mother menace

「彼女」と別れて一番心配なことは、「彼女」が孤独なまま死んでいくことだった。自分が支えていなければ、彼女がやっていかれないと思い込んでいたのだ。だが、蓋を開けてみればどうか。彼女は充分やっていけていた。わたしが想像したような彼女はそこには…

アンダー・ザ・オール・マッドマン

不思議でならない。肉体関係のある女性から百発百中で、あなたは他人を見下している、と宣言される。百歩譲って、おれが他人を見下しているから君に何か迷惑をかけたのか、と問いたいが、女の脳味噌は容量が少ないのでついつい可哀想になって追求できない。…

犬神銀座

実の娘とはいえ、私は彼女と同じ時間を過ごしたことが殆どない。いや、彼女の顔を見たことだって数えるほどしかない。自分が父親だという自覚がないまま、彼女はどんどん成長していて、勝手に大人になっていたのだ。私が彼女に対して何らかのアドヴァイス欲…

1.5

ひとつの仮説をたてるとすれば、喪われたものというのは存在しない。したがって、葬送はできない。喪われたものなどはなにひとつとして存在しないという認識を共有することを第一の目的にする。視点をかえる、ということではない。言葉や形式に飲み込まれた…

豚は豚の夢をみる、あられもない姿の豚の

売比さんは多情な女で、多情な女ネットワークを駆使し、多情な女のための共和国を作ってそこの総理大臣をしている。売比さんはぼくにはとてもよくしてくれて、半身不随の画家の妻を用立ててくれたり、入れ墨が全身に入った歌人や(耳無し芳子ちゃん)、犬と…

milk, sausage, and a little of the conversation

インターネットが監獄を意識させるのか、監獄そのものが意識をもって接続と未接続の間を浮遊しているのか、ぼくには難しくて理解できそうもない。トルコ桔梗が花瓶にびっしりと飾られているのを眺めながら、ぼくは矯子さんを立ちバックで突いていた。矯子さ…